世界の分断を止めるのはエンパシー ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー要約レビュー

書籍レビュー

[1]はじめに

今週のレビュー記は
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』
です。

ポップだけど読んだ人を考えさせる
ノンフィクション。そんな感想を持ちました。

著者はブレイディみかこさん。もともとは福岡の
ご出身です。

アイルランドの方と結婚をされ、現在はイギリス
で旦那さんと息子さんの3人で暮らしており、
ライター、コラムニストとして活動されています。

この本は、イギリスの中学生男子の日常を取り
扱ったものですが2019年のノンフィクション大賞
受賞し、一躍脚光を浴びることになりました。

息子さんの身の回りに起きた様々な出来事を
母親の目線で書き綴った1冊になります。

日本国内にいては私たちがなかなか理解しづらい
人種差別や貧困差別を通して『他者理解に関した
問題』
に切り込んでいっています。

社会物のノンフィクション作品ですが子供は
もちろん、大人にも良質の課題図書として国内で
30万部を突破し、Amazonでも1週間待ちと
言われているほどです。

今回は以下の目次を用意しました。

[1]はじめに
[2]あらすじ
[3]いじめっこダニエル(人種差別)
[4]貧しい同級生、ティム(貧困問題)
[5]水泳大会(格差問題)
[6]3つの仮説
[7]あとがき的なもの

まず最初に本書の主要な登場人物をご紹介します。

著者はブレイディみかこさん。
日本人です。今作はこのみかこさんが見た
お子さんの成長記録的な意味合いになります。

他の登場人物は
ぼく今作の主人公、11歳の男の子です。
イギリスで中学生として暮らしています。

父親はアイルランド人、母親は日本人というルーツ
をもち、さらにイギリスに暮らしているという
という複雑なアイデンティティを持っています。

本作の中で、ハーフではなく自分はハーフ&ハーフ
であると語っています。

ダニエルハンガリー移民の少年で、ぼくと同じクラスに
います。父親はひどい人種差別主義者で、その影響
を強く受けた彼も、時折人種差別的な発言を
することで知られ、時折問題を起こしてしまいます。

ティムイギリス人の両親を持ち、ぼくやダニエルと同じ
クラスです。生まれたて家が貧しく、それが原因で
心無い差別を
受けてしまうこともあります。

この4人を覚えておいてください。

[2]あらすじ

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本著の始まりは、それまで小学校に通っていたぼく
が中学校へ進学するところからスタートします。

中学校生活の前半、1年半の出来ごとを記して
いるそうです。

それまで通っていた小学校は地域でも裕福な小学校
で人種差別や貧困問題などもなく、平和、平穏に
過ごしていました。

中学校への進学はほとんどの子はその区域でも有名
な私立の中学校へそのまま進学するのですが、
とある事から、家から近い中学校へ進学することを
ぼくは決めます。

この中学校はみかこさん曰く『元底辺中学校』
です。以前は最下層に位置づけられるほど荒れて
いたそうですが、若い校長に代わりそれから
徐々に改革を推し進めてきていたそうです。

芸術や音楽、ドラマなどの、アートの分野にとても
力を入れており、学校説明会で披露されたこれらの
取り組みが親子の心を強くうち、結果的にこちらの
学校へ進学することを決めたそうです。

ですが、そこは元底辺中学校です。住んでいる地域
は荒れた人たちが多く、いろいろな人種の人が
通っています。

見た目はアジア人の色が濃いぼくは、いじめられる
のではないかと父親は心配し、元底辺中学校への
進学を止めたそうです。

ですが、ぼくの気持ちはすでに決まっており、
こちらの元底辺中学校へ通うことになります。

突然ですが、『ブルーってどういう感情』だと
あなたは思いますか?

ぼくは『怒りの気持ち』と答えていたそうですが、
悲しい、とか気が沈む様子とかであることを
みかこさんはぼくに伝えています。

そんなある日、ノートの片隅にぼくが書いていた
言葉にみかこさんは惹きつけられました。

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』
とノートの隅に書かれていたそうです。

この言葉が、ブルーという感情についてみかこさん
と話をする前に書いたものなのか、それとも
話をした後にこの言葉を記したのか?
とても気になりますよね。

何事もなく中学校生活をスタートさせたと思われて
いたぼくでしたが、彼には彼なりの
『世の中の縮図』の中で日々葛藤していたんです。

イエローは日本人、ホワイトはアイルランド人
それでイギリスで暮らしている、という
アイデンティティはぼくを大きく成長させることへ
となるんですね。

本書の一番のポイントは『エンパシー』という
ものです。似たような言葉に『シンパシー』
あります。

シンパシーは『相手のことを共感する』という
意味で使われています。

それに対してエンパシーは
『相手の立場に立ってどういう気持ちなのか
 想像しようとする力』
として紹介されています。

具体的な違いとしては、例えば
大きな穴の中に落ちてしまった友達を穴の上から
心配するのがシンパシーです。

それに対してエンパシーは同じように穴の中へ
降り、一緒にどのように上っていくのか主体的に
考える。といったように分けることが
出来ると思います。

これからは、ぼくが体験してきたこの中学校で
起きたいくつかの事件をご紹介していきます。

[3]いじめっこダニエル(人種差別)

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ダニエルはハンガリー移民の男の子です。それで
いてイケメン、頭脳明晰という出木杉君の
ような人です。

ですが、彼にはひとつだけ大きな問題が
ありました。それは『人種差別的な発言』
してしまうというものです。

とある時には『お前らはバナナでも食べてろ』
ような暴言を肌の黒い人たちへ浴びせてしまう
始末です。

彼の父親は人種差別者で、父親の口から出た言葉を
ダニエルは同じように口にしていたのでした。

元底辺中学校では日本ではやらない授業が
行われています。『アラジン』を演じることに
なり、主役に抜擢されたのはダニエル、アラジンに
選ばれたのがぼくであったそうです。

本番が近づくにつれて、思いもよらない問題が
ダニエルに迫っていました。

声変りが始まってきてしまい、高音の声が出ない
ようになってしまっていたのです。

ぼくはそれを心配して、代わりに自分が歌うことを
提案しますが、『春巻きが詰まったような声で
歌うんじゃねぇ』
と差別的な発言で返されて
しまいます。

この発言にひどく憤慨した様子でみかこさんに
人種差別の問題について話すぼくですが、
みかこさんが伝えたのは『きっと彼は無知なだけ』
ということでした。

無知と頭が悪いのは違う。きっと彼にも
いつか分かるときが来る、とぼくに話します。

アラジンの発表の日、やっぱりダニエルの声は高音
が出ませんでした。

一番の見せ場、A Whole New World が始まった
時です。見事なまでに高音な歌声が会場を包みます。

ぼくがマイクを先生から受け取っており、とっさに
ダニエルの代わりに歌うのでした。
その様子を察してダニエルも口パクで応えます。

こうして、アラジンは大成功を収めることが
出来ました。みかこさんは家に帰ったぼくと話を
します。

「あそこで高音の出ないダニエルに歌わせたら
みんなで頑張ってきた数か月がムダになると
思ったから」
とぼくは答えます。

ダニエルとはどうなったかというと、電話番号を
交換してきたということで、より親密な中に
なれたようです。

[4]貧しい同級生、ティム(貧困問題)

ティムは経済的に貧しい家に暮らしている、という
背景があります。
ティムのお兄さんは食べるものが
無く、万引きをして捕まってしまいます。

ダニエルに貧乏人と罵られたティムは
ハンガリー移民であることへの差別発言を
返したことで二人は喧嘩をしてしまいます。

学校が下した処罰はダニエルには居残りだけ
であったのに対しティムにはもっと重い処罰が
下されました。

その様子を見ていたぼくは疑問が沸きます。その
疑問に対して、みかこさんにこう問いかけます。

「人種差別は違法なのに、貧乏な人の差別は合法
っておかしくない?」

それに対してみかこさんは
「そもそも、法は正しいというのは間違い、世の中
を回していくためのルールであって、必ずしも
正しくはない」
と答えます。

ティムが住んでいた地域は貧困街です。
ずっとおなかを空かせていたり制服のサイズが
小さくなっても買えない家庭も多い地域でした。

日本でいうところの生活保護も国から打ち切られ
先生たちが少しずつ援助していることが常態化
してしまっているという背景があります。

みかこさんはボランティアで傷んだ制服の中でも
状態の良いところを組み合わせる活動を近所の人
たちと始めていました。

ぼくが思い出したのはティムの制服がもう
ボロボロであったことです。

リユースした制服を渡したいと思ったぼくですが、
どうやったらティムを傷つけずに渡せるのか
悩んでいました。

ティムを家に招待しますが、用事があると帰りがけ
るティムに制服をぼくは差し出します。
『なんで僕に制服をくれるの?』と問いかける
ティムにぼくは静かに『友達だから』と伝えます。

結果的にティムは制服を持って帰り、学校へ
着てくれるようになりました。

[5]水泳大会(格差問題)

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夏に水泳大会が開かれました。
プールサイドにはたくさんの人だかりです。

みかこさんはふと気が付きます。
プールの向こう側には人もまばらで、あちらに
移動したほうが良く見えるんじゃないかと。

他の親御さんに説明されたのですが、対面は進学
する候補であった、私立校の人たちの席なのだ
そうです。

イギリスは階級制度がまだ色濃く残っています。
こんな中学校の水泳教室でもその制度によって
生まれる格差はこのような形となって出てしまって
いるそうです。

かくして、私立校と元底辺中学校の合同水泳大会が
行われます。

驚いたことに、両校の生徒が一緒に泳ぐことは
最後までありませんでした。

順位発表でも、上位はやはり私立校の子供たちが
独占していき、メダルを涼しい顔で受け取って
いきます。

ぼくは昔は日本の九州に住んでいたこともあり、
みかこさんのお父さん、ぼくから見れば
おじいちゃんに荒波に落とされ、しごかれたこと
で泳ぎに関しては自信があったそうです。

公立校で初、3位に食い込むことが出来たそうです。

この日、一番のヒーローは意外にも公立校の男の子
でした。

競泳用の水着をつけた私立校の生徒たちを
普通の海パンで泳いだ彼がやぶり、初の金メダルを
ゲットしたのです。

貧困層と上流階級の縮図が現れていたこの水泳大会
において公立校の人たちが歓喜したのは言うまでも
ありません。

日本では考えられない日常ですが、イギリスでは
さも普通にこのような事が行われているのに
ちょっとびっくりですよね。

[6]3つの仮説

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最後のエピソードはみかこさんとぼくがふたりで
路地裏を歩いていた時のことです。

ホームレスの方が二人に近づいてこう話しかけました
「ニーハオ、ニーハオ」
みかこさんは日本人です。中国人ではありません。
ですが、イギリス人から見たらアジア圏の人という
認識しか持てないのは分からなくもありません。

憤慨したみかこさんは足早にその場を去ります。
この出来事を振り返って、とある仮説を
ぼくはみかこさんに話す場面がとても印象的
でした。その仮説とは

[1]
日本人の母親と一緒にいたから、ニーハオと

声をかけられたのかもしれない。
西洋人の友達と一緒に歩いている時は、自分は
アジア系だと思われたことはない

[2]
誰と歩いていてもアジア系だとはわかるけど、
母親と子供という弱い立場であったから声を
かけられたのかも。
同級生と歩いていたらバカにされることはない

そして、3つ目の仮説です。

[3]
ニーハオはハローっていう意味だから、
フレンドリーに接しておけばお金がもらえる

かもって実利的な考えだったのかも

中学生の子供がこんなことを考えられることに
みかこさんは関心します。

エンパシーというものを授業でならった、とぼくは
続けます。

「こうやって決めつけずに色んな可能性を
考えてみることがエンパシーの第一歩だって」

イギリスでは、日本では教えない教育も盛んに
行われているそうです。

その一つが、このエンパシーについて
他には公民と道徳を合わせたような
『イギリス市民であること』のような教育も
しっかり行われているそうです。

[7]あとがき的なもの

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イギリスは様々な人種が住んでおり、それぞれに
階級もあり、日本とは比べ物にならないほど
多様性を持った国です。

それゆえに分断が進んでいる、とみかこさんは
憂いています。

そうした分断を埋めていくのに必要なものこそ
エンパシーです。

相手の立場に立って、考えてみようとする力
まさにこれが大きなカギとなりえますよね。

エンパシーとは何?と授業で問われたぼくが答えた
のは『他人の靴を履いてみること』だそうです。

ボロボロで汚れているかもしれない
ぶかぶかで大きすぎるかも、そのまた逆でとても
履けないほど小さいものかもしれない

でも、それぞれの人がその靴を履いて
世界を見て、食べ、笑い、そして眠り
また次の日も生きています。

他人の靴を履いてみる

これはまさにエンパシーとは何?について
的確に答えた例ではないかと思います。

ここでは挙げませんでしたが他にも
身体は男の子で心は女の子の話
クリスマスパーティーで行われたライブの話
日本へ里帰りをした時の話

などなど、たくさんのエピソードが
本書の中で語られています。

日本に暮らしている限りでは知りえないリアルな
問題を中学生は中学生なりにぶつかり、悩み
乗り越えていっている姿が心を打ちます。

イエローとホワイトは両親の肌の色
ブルーは心の状態でしたが
本書の最後にこのブルーはとある色へ変化します。

ぼくは何色へ最後に変わったのか
それは上記の語られなかったエピソードとともに
ぜひ本書を手に取ってみ見てみて下さい。

今回は
ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
を要約しました。

では、最後までご覧いただき
ありがとうございました。

また次回☆ミ

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